昔ながらの手法と、厳選した素材でつくられる鯖寿司

いづう いづうの包装紙には、初代泉屋卯兵衛の名から取ったうさぎ、富士山、三保の松原を描いた簡素な絵が刷り込まれている。この包装紙のデザインは、いづうが天明元年(1781)に創業して間もないころ考案されたもの。そして、二百余年の星霜を経た現在に至るまで、一貫して寿司の包み紙として使われ続けてきた。富士山や三保の松原は、いずれも日本一を意味する。つまりこの絵は、いづうが日本一の寿司をつくり続けていくという、気概や自信を表しているのである。
 古来から京都の家庭では、祭りなどの「晴れ」の日に鯖寿司がつくられてきた。これに着目した初代泉屋卯兵衛は、寿司づくりのプロとしての技術を注ぎ込み、吟味した材料を贅沢に使うことによって、鯖寿司の商品化を実現したという。
 鯖は日本海で捕れた物しか使わず、何代も前から、いづうの鯖だけを扱っている魚屋を通して仕入れている。また、米は近江米を用い、こちらもいづうの寿司米を知り尽くした特定の米屋から入れている。そして、鯖も米も、いづうの寿司専用につくられている特製の酢を使い、丹念に味付けが施される。昔ながらの手法は今も厳格に守られている。

手作りの良さを守り、ロングセラ-をつくり続けたい

京都には何代も続いた老舗がたくさんありますが、それぞれの店の味は、やはりその時の当主の味であるといえます。時代の変化に従って、人の味覚もまた変化していくものであるからです。しかし、伝統的な製法の根本の部分に関しては、いつの時代も決して変わることはないのではないでしょうか。いづうの鯖寿司のつくり方も、すでに高い次元で完成されており、他の方法で置き換えることはできないと考えられます。
 しかし、いづうの寿司づくりにおいて、何よりも大切にしているのは、美味しいものをつくろうとする「気持ち」です。すべての作業課程で、そうした気持ちを指先に込めることができるのが手作りの良さであり、だからこそ機械ではつくれない美味しさが生まれるのです。もちろん、人間の手でつくるかぎり、大量生産はできませんが、これからも私どもは、ベストセラ-よりもロングセラ-の商品をつくっていきたいと願っています。
 また、京都は日本の食文化の中心でもありますから、私は「メイド・イン・京都」という意識を持つべきだと考えています。京都という街でなければつくれない伝統の味を、誇りをもって守り育てていくことが、京の老舗の責任でもあるのではないでしょうか。これからも、決して京都のステ-タスにあぐらをかくことなく、ひたすら真当に美味しい寿司をつくり続けていきたいと思います。

店舗情報

創業 天明元年(1781年)
商号 株式会社いづう
所在地 京都市東山区四条切通一筋半上ル東側
電話 075-561-0751
FAX 075-561-0750
営業時間 午前11時~午後11時
定休日 火曜日(祝日は営業)
いづう 地図 いづう 外観

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