京都の近世文化の一翼を担った京の酢

村山造酢 池田藩(現在の岡山県)の武士だった村山家は、享保年間に入洛して酒商を創業し、併せて酢や醤油を商うようになった。後に、友禅染の色止め剤としての酢の需用が高まったことから、清酢の醸造を専業とし、事業として飛躍的な発展を遂げる。同時に、食酢についても絶大な支持を得るに至り、ご膳酢司として確固たる地位を築き上げていった。
 同店の商標「千鳥」は、「加茂川や清き流れに千鳥すむ」という古歌にちなんで名付けられた。友禅流しが行なわれた鴨川には、その昔、川千鳥がたくさん生息していたとのこと。そして、水辺に羽ばたく美しい鳥の名を冠した食酢は、京の食文化に欠かせない存在に育っていったのである。柔らかな酸味とコク、まろやかさと深みのある旨味が千鳥酢の特徴。江州米と清涼な水を使い、高い醸造技術を駆使してつくられる同店の酢は、京の味を陰で支え続けてきたといっても過言ではないだろう。

人と自然、歳月が醸した食の文化を明日に伝えていきたい

酢は、いうまでもなく料理に使われる「必要」な調味料です。調味料としての使命とは何かといえば、素材の持ち味を引き立てる「風味の良さ」であると考えます。そして、京都でつくるかぎりは、京の地の味、京料理にふさわしいものではなくてはならないと思い続けてまいりました。
 ところで、近年の社会環境や都市環境の変化により、伝統的な習慣や文化を継承することが大変難しくなってきております。また、核家族化の進行はお年寄りと若者の関係を希薄にし、若者が伝統的な習慣や文化に触れる機会が少なくなってきました。
 食文化においても例外ではありません、インスタント食品や加工品が主流になり、手軽さ、便利さを売り物にした食品があふれるように店頭を飾っています。手間ひまかけた料理は、お年寄りやプロの手にゆだねられることが多くなってきています。若い世代にも伝統的な食文化に触れる機会をつくり、理解してもらうことが大切だと感じます。
 昔、鮮魚が入りにくかった京都では、酢は材料の保存や加工には欠かすことのできないものでした。素材そのものを最大限に生かしながら、ひと工夫もふた工夫もされる京料理。それは決してプロだけの技術ではありませんでした。そのためにも調味料は、使ったために味覚のバランスがくずれるような、強いものは適さなかったのです。当店はこうした風土を背景として、長年米酢を作り続けてまいりました。
 近年、酢は健康食品としての効用もうたわれるようになり、業界としての生産量も増えております。しかしながら、私どもはあくまで調味料としての使命に徹した風味を追いもとめ、料理の裏方として伝統の技術を守り、良き食文化の伝承と発展のお手伝いをさせていただければと思っております。

店舗情報

創業 享保年間
商号 村山造酢株式会社
所在地 京都市東山区三条大橋東
電話 075-761-3151
FAX 075-751-9119
営業時間 午前8時半~午後5時
定休日 日曜・祝日
村山造酢 地図 村山造酢 外観

前のページヘ トップページへ 次のページへ